女性でも入りやすい憩いの場所に:クライミングジムソレイユ オーナー 田邊明子(たなべさやこ)さん
愛知県長久手市の住宅街の一角、倉庫を改装したボルダリングの「クライミングジム ソレイユ」。
ジムの中はウォールが白く塗られ、カラフルなホールドと相まって、非常にカラフルでポップな雰囲気。クライミングジムはどうしても光が入りにくい構造になりがちで、「女性が入りにくい」という雰囲気を持つジムも少なくありません。
今回取材をお願いしたソレイユの扉を開けると、ソレイユの女性オーナーである「田邊明子(たなべさやこ)」さんが、とびきりの笑顔で出迎えてくれました。
こちらのクライミングジム ソレイユをスタッフと共に切り盛りしている彼女。自身の半生と、クライミングジムのオーナーとしての想いや今後のビジョンを聞いてみました。
”超”元気娘が大学で出会った登山
──本日はよろしくお願いします。さっそくですがクライミングジムを経営されていますが、ボルダリングとの出会いを教えていただけますか?
今日はよろしくお願いします。
インドアのボルダリングだけやってたわけではなくて、元々体力自慢で、スキーや登山が好きだったんです。とにかくめちゃめちゃ体力があって、運動大好きだったんです。土台がそんな感じだったので、大学へ入学して何かサークルに入ろう!ってサークルを探してたときでしたね。
そしたら偶然、山岳系で横文字のおしゃれな名前のサークルがあるじゃないですか。
「大学生活を楽しもう」なんて考えてましたから、ライトな感じで登山を楽しめたらなー、なんて甘い考えでそのサークルに入りました(笑)そこが登山・クライミングにハマったきっかけになったワケですが・・・
そこで実際サークルに入ってみたらもう厳しいのなんのって。私は理系でしたから、学校生活でサークルばっかりやってるわけにはいかなかったんです。なのに私の授業が終わるのを教室の前で先輩が待ち構えてて、そのまま部室に"強制連行"みたいな(笑)
──ええ!?いわゆる「ガチ系」の山岳サークルだったと・・・?
そうなんですよ~(汗)
合宿とかもものすごくキツくて、「絶対やめてやる!」なんて思ってました。でも辞めさせてもらえなくて・・・サークルに入った同級生は一人二人と辞めていき、最終的に女性メンバーで残ったのは私ともう一人だけでした。
まぁもちろんそこで登山の「いろは」やクライミングの知識や技術、諸々が身に付いたので自分のクライマーとしての基礎・・・になっているかもしれませんね。
でもやっぱりあの時代には戻りたくないなぁ(笑)
卒業、登山との別れ「二度と登山なんてやるもんか!」
※厳冬期に槍ヶ岳方面を撮影 マイナス25度の世界、そして滅多に見ることができないこの季節の美しい朝焼けはクライマーでしか見られない自然の奇跡
──なかなか厳しいところに身を置いてらっしゃったんですね(汗)
うんうん、だから大学を卒業するじゃないですか。
そうなったら「二度と登山なんてやるもんか!」って。あんなにキツい思いをしたのに社会人になってからもそれをやるなんて考えられなかったですね(笑)
──燃え尽き症候群ってやつでしょうかね・・・
かもしれませんねぇ。
サークルから解放されたときは、それはそれは嬉しかったですよ。
会社の先輩と行った穂高で待ち受けていたものは?
──そんな田邊さんですが、いつ登山・クライミングに復帰したんですか?
入社してすぐ、私が山岳系のサークルに所属していたことを知った先輩に「穂高に行きたいから連れていってくれ!」って頼まれたんですよ。
そこで当然ですけどちゃんと準備をして向かうじゃないですか。そしたら目の前に登れる岩があるでしょ?ついでに厳しい先輩の目からも解放されて。
クライミングをするための技術・体力。そして先輩から解放された自由(笑)。
全部の条件が揃ったら、もうね「やばーい、たのしーー!」ってなっちゃったんですよね(笑)
大学時代は厳しいことばっかりでしたけど、社会人になったら誰からも怒られないし!(笑)ただただ山って「楽しいだけ」の場所だったことに気づいちゃったんですよね。
それからですよ。毎週毎週、山に通い倒す日々が始まりました。
結局の所、自然大好き!アウトドア大好き!
──体力自慢でスキーや登山をしてたんですよね。体一つで遊べるクライミングがぴったりマッチしたっていう感じでしょうか?
結局の所、山とか自然が大好き。それにアウトドア大好き!っていうのが根幹としてあったはずなんです。それがサークルで「辛い」っていう部分が大きくなっちゃってただけで、大学を卒業したら「辛い」が消えて「自然大好き!」が復活しちゃったんでしょうね。
それに仕事も完全にインドアだったんで、体を動かしたくてウズウズしてたのかも(笑)
──ちなみに今はクライミングジムを経営されてますが、前職は?
あ、わたし実は元薬剤師だったんです(笑)
平日は仕事で室内で黙々と仕事、それで週末は山!っていう生活スタイルでした。
──薬剤師さんだったんですね(驚)
病で体力が続かない・・・ならば・・・!
※小川山(おがわやま)にて撮影 クライマーからはクライミングのメッカとして知られる場所
そうですね。薬剤師を続けながら登山・クライミングを楽しんでいたんですが、7年くらい前に40度の高熱が半年続いたんですよ。
そのときは原因不明だって言われてて、今思えば「よく生きてたな」って感じでしたよね。結局その高熱の原因は膠原病だったんですけど、それで腎臓の機能が低下してしまって、今も戻らないままなんです。
あれだけ自慢だった体力も全然続かないし、それで長時間になる登山・クライミングはいけなくなってしまったんですよね。
──元気だったのが突然そうなってしまうとツラいですよね。
元気なときって体が動くから、あんまり色々なこと考えなかったんですよ。でも動けないと色々考える時間もできる。
「インドアのクライミング(ボルダリング)なら自分のペースで楽しめるからジムをやろう」って思い立ったのがその頃ですね。
若い頃からなんとなく考えてはいましたけど、実感がないというか具体化してこなかったんです。でも病気で動けないから「あぁしよう、こうしよう」とボルダリング・クライミングジム開業に向けて動いたり考える時間がとれたんです。
あ、そうそう。体力的に厳しくなってしまったので、そのタイミングで薬剤師の仕事も辞めましたね。
──そうだったんですか。ソレイユには何かコンセプトというか、「こんな風にしたい」と考えていたことはありましたか?
ボルダリングのクライミングジムができ始めたのが、今から15年くらい前でしたかね。その当時は女性がものすごく入りづらかったんです。なんとなく"男がやるもの"っていう雰囲気があったというか。
それにチョークで結構汚れが目立つところも多かったですし、雰囲気も男性が黙々とトレーニングしてたりとか。
そんなところやっぱり女性って入りづらいじゃないですか。だから「女性でも入りやすいクライミングジムを作ろう!」っていうのは最初から決めてました。
──ウォールも白に統一されて、清掃も行き届いてますよね。それに光も差し込んで明るいですしね。
そうなんですよ。掃除はホントにめっちゃがんばってますよ(笑)ボルダリング、クライミングっていうものを女性にもっと知ってもらって、やってみて欲しいからそこは妥協したくないです。
初心者だって女性だって、どんどん気軽に来て!
──ボルダリングのいいところ、おすすめしたいところってなんでしょうか?
うーん、やっぱり短時間で気軽にこれるところでしょうか。会社帰りにふらっと立ち寄っていただいてもいいですし、主婦の方の隙間時間にも足を運んでいただけます。
ボルダリングジムって夕方からしかオープンしてないところも多いんですが、うちは月・水・金曜日は10時から開店しています。だから子供を送り出して、家のことを片付けて、買い物のついでに・・・っていう主婦の方も結構いますよ。
※営業時間などについてはページ下の「クライミングジム ソレイユ」のホームページをご覧ください。
──「興味はあるけど、難しそう」って人もいると思いますが、どうでしょうか?
ボルダリングって力がないと無理なんじゃないか、って心配する人も多いですよね。でも私、握力とか小学生並みですから非力な女性でも全然大丈夫です(笑)
──ええー!? スイスイ登ってるじゃないですか。
腕の力で無理にいこうとすると限界がありますけどね。足を使ってバランスをとりながら行くのがコツです。
だってもう49歳ですからね~。こんな年になっても力がなくても、さらに病気でそこまで元気に動けるわけじゃなくても(笑)コツみたいなのを掴んじゃえばいけますよ!
だから女性だって子どもだって、気軽に来てもらえたらいいな、って思います。力なんてなくても十分楽しめますから。しかも子どもだって、保育園くらいからやれちゃうんじゃないかなぁ?
親子パックの料金を格安で設定していますので、子どもさん連れの方もお待ちしてます。ご心配なら一度お電話で相談していただいても構いません。
ボルダリングはダイエットやボディメイクにも!
──ボルダリングを親子で楽しめてしまうのは嬉しいですね。ダイエット的な観点で見るとどうでしょう?
私も出産で体重が20キロ増えてしまったんですが・・・
出産や子育ての時期ってどうしても時間がなくて、クライミングから離れてたんです。そのときに20キロ増量・・・それでランニングとか食事制限とかすると体重は落ちていったんですけど、おなか周りのぜい肉が落ちなくて(笑)
そして子どもが少し手を離れたときに、自分がクライミングに復帰。そしたらおなか周りがスッキリして、元通りになったんですよ。今でもしっかり体形が維持できていますね。
ダイエットというよりはボディメイクですかね。体幹をしっかり使うので、継続すればおなか周りが引き締まってきます! 私の場合、病気のこともあって食事には気を遣っている方ですが、それでも苦しい極端な食事制限はやってません。ごく自然な食生活のままでスタイルの維持ができてます。
──スタイルが維持できるなんて素敵ですね。ボディメイクに興味津々な女性が押し寄せてくるかもしれませんね。
ダイエットって苦しいとか、キツい、とかそんなイメージがありますけどね。ボルダリングなら楽しみながら、さらに体も絞れると思います!
子どもの趣味としてもボルダリングはいいことたくさん♪
──そういえば親子パックの料金設定もあるようですが、子どもさんがボルダリングをすると「こんないいことあるぞ!」みたいなのはありますか?
うーん、やっぱり大人と子どもが混じりますからね。子供同士だけじゃなくて大人と一緒にいることによって、礼儀正しくなると思います。順番をちゃんと守るとか、登っている人がいるウォールに近寄らないとか、マナーが身に付いてくると思います。
あとは「登れた!」「できた!」っていう達成感を味わうことができるじゃないですか。ボルダリングって”課題”って言われる、決められたルートのようなものがあります。それを攻略できたときの達成感はなかなかのものです。
そしてできないときには「がんばって登ってやろう!」「どうしたら登れるようになるんだろう」って頑張れるし、考える力もついてくるんです。努力や目的達成のための考え方も身に付いてくるので、勉強や学校生活にもプラスに働くことがあると思ってます。
大人の趣味のコミュニティができるってすごいこと!
もちろん子供だけじゃなくて、大人だってボルダリングは楽しいんですよね。
会社や学校など、大人になると上下関係や利害関係が絡む人との付き合いがどうしても増えてくるじゃないですか。
でもボルダリングって趣味ですから、職業や年代、性別も全く関係なく純粋に「自分が楽しむ趣味」としてのコミュニティができあがってきます。
大人になってから、そんな風に楽しめるコミュニティってなかなかないと思うんですよね。それにみんなの立場がフラットですから、お互いに変に気を遣うこともなくて「居心地がいい」とお客さんも言ってくれています。
──「大人のしがらみ」ってやつから離れて純粋に趣味を楽しめるのはいいですね。
ですね。
常連さんでも初めての方でもみんなが趣味として楽しめる、そんな空間を提供できるようにこれからもがんばっていきたいですね。
初心者の方もルールや登り方からレクチャーさせていただきますので、クライミングジム ソレイユへぜひお越しください。
──田邊さん、本日はありがとうございました。最後にズバリ、ソレイユが目指す今後の目標を教えていただけますか?
「クライマー」の楽しめる場所であり、みんなの憩いの場となってくれること、そんな場所にソレイユを育てていけたらいいですね♪
本日はありがとうございました。
明るい入りやすいジム 華奢な見た目の凄腕クライマーがお出迎え
明るくて女性でも入りやすいように、をコンセプトにしているだけあって、初心者の女性でも安心して訪れることができる明るい雰囲気のボルダリングの「クライミングジム ソレイユ」。
クライミングをする女性、となるとなんだかマッチョなイメージを持ってしまいますが、見た目はむしろ華奢な見た目の普通の女性。
だけど登ってみると、とんでもなく傾斜がついたウォールをスイスイと登っていく凄腕クライマー。そして話し始めるとアットホームでフレンドリーな雰囲気。
このギャップがまた心地良くて、取材に訪れたはずなのにこちらもソレイユの空気や雰囲気、オーナーの人柄についつい惹き込まれてしまいました。
愛知県長久手市にあるボルダリングの「クライミングジム ソレイユ」。
インドアのアクティビティなので、天気や時間を心配せずに楽しめるボルダリング。ぜひ興味のある方はクライミングジム ソレイユの扉を叩いてみてはいかがでしょうか。
全くの初心者でも、ジャージなどの服装だけ用意をしていけば十分楽しむことができちゃいます。シューズレンタルもありますし、更衣室も完備していますよ。
今回取材に訪れたボルダリング・クライミングジムはこちら
名称:クライミングジム ソレイユ
代表:田邊 明子(タナベ サヤコ)
住所:愛知県長久手市熊田313番地
電話:0561-62-0400
※お店の前の道路が一方通行になっていますので、進入方向には十分にご注意ください。
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